「住宅は4000ケルビンの白色灯」が常識だった時代が長く続いた後、「電球色」の蛍光灯が登場したことは、照明業界では画期的でした。住宅の設計の際、シーリングライトだけではなくダウンライトも設置するなど、少しずつ照明への関心が高まってきているそうです。最近はLEDが主流になりつつあり、照明の可能性も広がっています。
馬場さんがいちばん知ってほしいことは、「暗さの心地好さ」。「アンビエント」(環境)の観点から、極端に言えば、部屋の中はぶつからずに歩けるよう、家具などの存在がわかる明るさがあれば十分です。「タスク」(作業)に必要な明るさをタスク用の灯りで確保すれば、問題ありません。「大切なのは抑揚です。明るいところは明るく、暗いところは暗く。明るさにメリハリをつけると、不要な情報がなくなってとても快適なんですよ」。
このような環境を体験すると、最初は暗いと感じても、1週間、1カ月、3カ月と過ごすうちに、その心地好さがわかってくるそうです。LED照明は調光(明るさの調節)機能がついているものも多いので、その機能を利用して、部屋全体の明るさを控えめにしてみることから光環境の整備を始めてはいかがでしょうか。新たな光環境で一定期間過ごす“お試し期間”を持ってほしいと馬場さんはアドバイスします。
「夜の空間は光がつかさどるのですから、良い光環境で暮らすことを知らない人は、人生の半分を良い空間で過ごせないということになってしまいます。光環境の良し悪しを知ると、大げさに言えば、人生を楽しむ選択肢が増えるんですよ。自分にとって心地良い明るさや好きな色温度などに気づいて、シーンによって光を選び、楽しめる方が増えたら嬉しいですね」。